花は折りたし梢は高し

とにかくいろいろうまくいかねーなってことを書いていこうと思います。

多分とても重大だったのだけどもすっかり抜け落ちていた覚書を書いてみる

新しい仕事頼みたい、とお昼休みに呼び出された喫茶店。

なかなか切り出さず、黙り込んでいる彼を前に、私は携帯に視線を向けていた。

 

この人はこういうところがある。

とにかくマイペース。

自分が話す気にならない時は、基本黙っている。

 

正直今の私は仕事だとかペースだとか、それどころじゃないのだ。

悩んで考え疲れて、でもそれじゃダメで、決意しなきゃいけないことがあるのだ。

 

眉間にシワを寄せてうつむいて携帯を眺めていた私は、やめるわと、呟いた声に、へ?と、顔を上げた。

彼はなんてことないような顔をして、ふん、と彼は笑って、原稿と思しき書類を私に渡した。

 

それを眺めて、ああ、と納得した。

 

原稿は名刺。

新しい肩書きの冠をかぶった、前にいる人のフルネーム。

 

しばらくじっと原稿を見つめて、私は言葉を選んでいた。

こういう時なんて言えばいいのかな。

驚いて見せればいいのか。笑えばいいのか。

 

「裏書きは英語でいいの?」

出た言葉はそんなどうでもいいような内容で。

そんな私の葛藤を見透かしているであろう彼はニヤリとした。

 

その表情に、なんとなく分かった。

初めから、いつかは終わると思っていたものなのかな、と。

年貢の納め時、みたいな顔をしていたから。

 

でも確かに、このままいけるかな、とも考えていたのだと思う。

それを願っていたのだとも。ずっと何かをあらがっていたのだとも。

 

そう思うと、今までの単調で穏やかで、ひとりぼっちの生活が、

彼にとって、とても愛おしく大切で貴重なものだったのだろうというのも想像ができた。

 

今の彼からは諦めや悲観的な雰囲気は感じない。

ただ、腹を括ったような、妙に勝気なエネルギーは感じる。

それがなんだか、かっこいいなあとも、置いて行かれたようにも思えた。

 

「まあ、やるからにはテッペン取んな。」

やっと出た私の言葉に、彼はまた、ふん、と笑った。

 

肩書きで察するに、多分、すでに組織のテッペンだったけれど。

その重圧とか、そういうの。

分かった気になって、背中を押したくなった。

 

「頑張る君に、ご褒美あげよか。」

激励のつもりでふざけて言った言葉に、彼は表情を崩した。

……ご褒美目当てとか、男らしくないだろ。」

ふうーと、大きく息を吐いた後、メガネを外す。

ああ、気が抜けた表情。いつもの顔だ。

「ふうん……。何もなくて、頑張れるものなのかねえ。」

私はクルクルとストローを回しながら、じっとその様子を眺めていた。

彼もメガネをかけなおしたあと、じっと私を見すえた。

「分かってんじゃん。」

「は?矛盾してない?」

「いや?」

肝心なことを言わない。

でもそれ以上聞くのはなんとなく悔しいような、気もする。

君のナゾナゾに付き合ってる余力はないんだ。

 

「欲しがることに疲れて、何もいらないと思ってたんだけども。

欲しいものがないわけじゃないから。」

沈黙を破った言葉。

どうせやるなら、"それ"を取りに行く。

と、そういうことなのだろう。

 

その気になればなんでも手に入れられて、今だってなんでも持ってるのに。

それほどまでに欲しい"それ"ってなんだろうなあ。

ここまで彼が諦めた当初のきっかけが頭をかすめたけれど、それはありえないしなあ、と思い返す。

 

何だろう。

それは純粋な興味本意な疑問だったから、まあいつか聞けたらいいやと飲み込んだ。

多分今聞いても、お前には関係ないとかなんとか言って、ふんって笑って、結局は教えてはくれないのだろう、という予感もあった。

 

だったら言うな。

後出しじゃんけんみたいな、そういうところ、イライラする。

ああ、余裕ないな。自分。

 

チラっとスマホを見た。

ああ、時間だ。

 

「そろそろ戻る。紙とか、いつものでいいね。」

立ち上がる私を尻目に、生返事をしながら、彼はかばんからスルッとネクタイを取り出していた。

 

私は会社に戻った頃には、その内容をすでにすっかりと忘れていた。

どれだけいっぱいいっぱいなんだい。

 

後日、まったく余裕のない状況から、少しだけ肩の力が抜けた瞬間にこの出来事をふと思い出した。

ので、覚書として記しておくこととする。

そろそろ1年経つからね、と今の気持ちを書いてみる。

私は子供の頃から、本当に良く泣く。

保育園の頃から「◯◯ちゃんは泣き虫だねえ」と言われてきた。

 

泣くのは弱いからだと。

泣き虫=弱虫だと思っていたから、私はそんな自分が嫌いだった。

 

高校を卒業してから、私は強くなった。

実力社会というものが肌に合っていたのだと思う。

私は専門性の高い学校に進学したため、苦手なもので評価されることはなくなった。

周りの見る目が変わり、一目置くようになった。実力があれば発言権も増した。

やることをやっていれば文句は言われなかった。

私はあまり泣くことがなくなった。

 

調子に乗って社会に出てから、自分の力のなさに愕然とした。

下積みをしながら、少しずつ自分の地位や居場所を作っていった。

思うようにいかない悔しさに、トイレで泣いたこともあった。

 

そのうちまた、地位を築くにつれてあまり泣かなくなった。

今仕事で泣くとしたら、本当に悔しい時と、感情をぶつけられすぎてびっくりした時だ。

 

泣くっていうのは全身全霊で、一生懸命頑張ったり想ったりしても、それでも報われないと実感した時なんだ、と気がついた。

 

現に本当に悲しくてショックな時は、涙が出なかったりする。

泣けるのは、その衝撃が心に降りてきた頃。

大切な人が病室で息を引き取った時も、家に連れて帰った時も、泣かなかった。

お通夜とお葬式の時に、やっとおかしくなるくらい泣いた。

今もふと気が抜けた時に、泣くこともある。

 

私は1年前のあの時大きな決断をした。

追い詰めていたけれど、自分も追い詰められていた。

え、どうしよう、いや、疑いようのない自分の気持ちは分かっていた。

 

でも、希望に反する選択をした。

後悔することが分かっていてもあの時はそうするしかなかったと、今も思う。

それでも、分かっていても、その衝撃が、今になって心に降りてきて、私の涙腺を崩壊させる。

 

叶えたかったのだ。本当に本当に。

届かなかった想いだったけれど。届いちゃいけない願いだったけれど。

 

それなら断ち切ればよかったのだ。叶えればよかった。それも私には出来た。

でも出来ないと、決めたのは他の誰でもない自分。

 

どちらかを守るとしたら、後先より、あの時はただ愛おしさに従った。

これ以上傷つけるなら傷つこうと思った。

それは理性だ。

 

今になっても、まだそれを私は引きずっている。

でもあの決断があったから、きっと今も救われている。

 

いつか報われたと思えた時に、ゆるやかに流せると思っていた澱は、今も沈んで私の心の中にある。

淀んで腐敗している。酸欠で苦しくなる。

 

もうすぐあれから一年になる。

たまにふと思って、慌ててかき消すもう一つの選択。

 

私が勇気を出す番なのだとあの日決めたこと。

全部引き受けると決めたこと。誰かのせいだとは思ってない。

 

だけど少しだけ、ここで吐き出させて欲しい。

思い出すと過呼吸のようになる、あの日のこと。

 

1年前に分かっていたから私はこのブログを書き始めた。

こんな風に、傷が膿を出す頃、自分の傷を自分で慰められるように。

大きな喪失と向き合えるように。

 

完全に治ることはないのも分かるから、これをずっと抱えていく。

喪失は、現実を上塗りするしかないのも分かる。

少しずつ心の整理をしなくてはいけないことも。

望まれなかったものでも、私はあのわずかな期間、確かに叶うはずのない夢を叶えた。

何も自覚がなかったけれど。不確かさをもって、そこにいたもの。

それを捨てたのは自分だ。誰のせいでもない。

違うよ、捨てたんじゃなくて、本当に、肉を切る想いだったんだ。本当に。

 

涙は、やっと最近出てくる。

決断は間違ってなかったけれど、報われなかったことも違いない。

 

しばらくして、私はすがるように、愛しくて、小さな命たちと暮らしはじめた。

会った時、私は選んだのではなくて、選ばれたのだと思った。

小さな命たちは私を選んでくれたのだと。

 

だから、選んでくれてありがとうと、一緒にいてくれてありがとうと、いつもいつも思う。

 

私のお腹のあたりに、服の中に潜り込んで上下する小さな命、を見て思う。

 

今度こそ、なんて機会があるんだろうか。

守れずに、まだ見ぬ手を放して、小さなろうそくを目をつぶって吹き消した

私のところへ、またぬくもりは来てくれるのだろうか。

許してくれるんだろうか。

 

どっちにしても今は、そんな資格ない。

自分で線を引いて、ダメだと、もうあんなことはしちゃいけない。絶対に。

身体の具合が悪くなっても、薬を飲み続けることで向き合ってみる。

 

もっと泣いて、澱も心も少しずつ流れ出て、そうすることで、ひとつの物語を終えよう。

涙は、報われなくても、私は一生懸命だったからだ。

 

今度こそ、答えを出す時が来た。

「惚れて通えば千里も一里」私が惚れたものとはなんだったのかと思うことを書いてみる

少しずつフェイクを入れて話をする。

 

昔、3年くらい遠恋をしていた。

 

もともと旧知の仲だったが、たまたま久々に会って、深い話をするうちに恋仲になった。

車で3時間くらいの距離だろうか。

当時私は、社会に出てからそれほど経っていなかったので、お金も無かったが、それでも月に一回程度、週末にせっせと通っていた。

 

しかも初めの半年くらいは、うっかり二股をかけられていた。

彼女とは別れたって言ったから付き合ったのに切れてなかったっていうね……

まあよくあるやつはは。

 

思い返せばかなりの二股率だ。

婚姻届まで書いた彼に浮気をされた時に「もう二度と浮気性とは付き合うまい」と心に誓った。

つまり、男とは付き合うまい、と同意義である、程度に、私は男というものを信じていない。

遺伝子的にそうでしょう。私より優れたメスがいれば、種を残したいと思って当たり前だ。

君を裏切れないなんてそんなのは幻想で、目移りしないのは、結局私の方が他のメスより優れていると判断してくれているか、求愛するのがめんどくさいだけだ。

 

と考えているが、それが何の因果か人妻になったりすんだから、人生って分からないものである。

 

さて、話を戻す。

 

初めは交代で行き来していた私達だが(交代でいけば月に二回は会える)

けれどすぐに私しか行くことはなくなった。

会う頻度は半分。

でも辛くも寂しくもなかった。

 

毎晩、いくらでも話せるようになったからだ。

彼が同棲していた彼女との家を出て、一人暮らしを始めたからだった。

 

付き合い始め、当然実家にいるものだと思っていた彼が、実は彼女とまだ住んでいたという衝撃。

どうりで連絡の頻度が下がったり、電話できないと言い張る夜があった訳だ。

(彼女は夜勤のある仕事。連絡が少ない日は、彼女の在宅日だったのだろう。)

 

いやはや、とんでもない男だ。

 

今思えばバカバカしいが、敷金礼金、初期費用は全て私が立て替えた。

もう彼女への気持ちはないし、別れているも同然だが、お金がないから彼女との家を出られない、という彼の言い分(言い訳)への、私なりの意地だった。

 

1Kのアパート。

下見も一緒に行った。

私は親に何かを感づかれるとめんどくさいので、遊びに行った時はタバコの匂いがつかぬよう、自分のコートは玄関にかけていたのを覚えている。

 

引越しからしばらく経ったある日、彼から「わかれました」とひらがな6文字のメールがきた。

当初は意味がわからなかった私は、勝手に彼女ともう別れたと思い込んでいただけで、その時点までズルズルと続いていたのを知った。

 

私は静かに問い詰めた。

彼女は精神が不安定で、仕事も落ち着いてなくてうつ気味で、俺が支えてあげないとダメだった。

彼女は俺と別れることも、新しい彼女がいることも納得してくれている。

でもしばらく一緒にいてと言われていた。

5年以上付き合い、同棲までした責任もあった、と彼。

 

んな無茶苦茶な。

もはや公認二股。

そして新しい彼を見つけた彼女に、三行半突きつけられた結果。

ドカッと彼女から彼の私物の入った段ボールが3箱が届いた。

 

なぜか彼女の新しい彼氏に対しなぜかクサクサしている彼を、励ましている私。

あれ?私ってなんだっけ?

セカンド?え?まあいいけど。

 

やー男ってなあ……男って。

 

そして、女は男前だ。

そんな男でも受け入れてしまうのだ。惚れていたのかなんなのか。

彼女が今は幸せに暮らしているのを風の便りで知っているのが唯一の救いか。

男女の関係って常識では考えられないものがあったりするなあ。

 

さて、その引っ越した家は、天井が高いところが二人とも気に入った。

そして、何より小さな穴ぐらのようなロフトがあったのだ。

 

秘密基地のように、ロフトにはパソコンや本棚を置き、大抵はそこで二人して篭って思い思いに過ごした。

なにもそんなに狭いところに閉じこもる必要もないのだが、ロフトの下のメインの部屋にはほとんどものがなかった。

彼の服が積み上がっている程度。

…というくらい、せまーい空間で過ごしていた。

 

ロフトには私の私物を置いておく棚も作った。

一緒にパソコンやゲームを眺めて、別々に本を読んで、たまにセックスして。

私が帰った時も、だいたい11時くらいにパソコンの音声チャットを始める。

彼はあのロフトでゴロゴロしながら、私と会話をする。

1時になったら、そろそろ寝るかと眠る。

ほぼ毎晩、2時間程度、なんてことない話をして過ごしていた。

とはいえ、ずっと話に集中している訳ではない。テレビを見ていたり、ゲームをしていたりもする。

 

洗濯機の位置などの間取りは、今ではよく思い出せないのに、あのロフトからの光景だけは鮮明に思い出せる。

変な名前のアパートだったな。

今はどんな人が住んでいるんだろう。

 

私が好きだったのは、初めは確かに彼だった。

けれど思い返せば、後半はあのロフトでゴロゴロ過ごすのが楽しみだった、ような気もしている。

 

思い立った深夜、ストリートビューであの辺りを見てみた。

建物自体は見えなかったけれど、どうやら現存するようだ。

 

いつか機会があったら、行ってみたい。

あの頃の私が置いてきた何かが、見つかるのかもしれない。

飛行機雲のように。神社で拾った松ぼっくりのように。

お弁当とはつまり、お手紙のようなものなのだと思うことを書いてみる

精神的に煮詰まったときは、料理を作る。

無心であれこれ手順や材料を組み立てて、こなしていく感じが好きだ。

 

冷蔵庫の中身、今ある調味料、作りたい気分のもの。

料理はちょっとした創作作業だ。

没頭するとなんだかスッキリする。

ちなみに夫婦喧嘩をするときはキッチンが一番良くないらしい。

(刃物があるから凶暴性が増すとかなんとか。関係あるのかなあ。)

 

私は人のお弁当を作るのが割と好きだ。

なんだかお手紙を書くのに似ている。

食べる人のことを思い、スペースを考えてできる限りを詰め込むのも

時差を置いて紐解かれるその感じも、完成したときの達成感も。

あの小さい箱は、まさに小宇宙。

ペガサスファンタジー。

 

ANAの機内誌のお弁当の連載が好きで必ず読む。

素人さんのお弁当の写真と、エピソードが載ってるやつ。

人の家のお弁当には、見たこともないようなおかずや、「その手があったか」と思うような工夫があったりする。

オレンジページとかもたまに読む。

しかし、それを参考に作ったことはほぼない。

 

私がお弁当を作るときのマストは卵焼き。

私が一番好きなおかずだったから、ほぼ入れる。

初めて作ったお弁当は、母親へのもの。

母親は未だにそのお弁当のことを忘れないでいてくれる。

 

大根のサラダを入れたことだけは覚えている。

そして多分、シーチキンか何かが入った卵焼きも。

ちなみに母親の作るお弁当は、冷凍食品もあるし、けしてキャラ弁とかデコ弁とかではないけれど

いつも彩りが綺麗で、遠足のときはなんだか鼻が高かった。

そのことを伝えると、母親はとても誇らしげだった。

今思うと、もっともっと伝えておけばよかった。美味しかったよって。

 

私が初めて異性に作ったお弁当は、確か腐らせたアレだ。

当時二股をかけられており、そのもう一方がお弁当を作っていたようで、私のお弁当など不要だったのだ。

冷蔵庫の奥で、巾着に包まれたままだったお弁当箱の中の、糸を引いていた卵焼きの衝撃たるや。

(ああ、せめてわからぬように処分できなかったのか……。男ってやつはな。ホントに。)

そいつには二度と作ることはなかった。

私は執念深いのだ。冷えた暗闇で糸を引いているのだ。

 

最近、引越しに際して捨てたものがある。

卵焼き用のフライパン。

確かニトリかイオンかどこかで買った、通常よりもとりわけ小さいサイズの廉価なものだったのだが、愛用し

すでにフッ素加工がボロボロだったので、処分したのだが

 

ない!

同じサイズが全然売ってない!

 

あれさえあれば焦げ目もないふっくら厚焼きが焼けたのに!

卵一個の卵液に対してのいい具合のフライパンだったのに!

仕方なく、売っている中で一番小さいやつを購入したが、一回り大きくて、なんだかうすっぺらい厚焼きになってしまう。

 

火が通り過ぎて、くるんと綺麗にまとまらないときもある。

最近の私の卵焼きの出来は今一つで、なんだか気分が冴えない。

 

フッ素加工とかでなく、ちゃんと銅かなんかの、油しみこませる感じのやつ、探してみようかなあ。

夜に話すような秘め事の話しをあえて考えて書いてみる

その昔、私は当時の彼氏が運転中、助手席からそっと手を伸ばし僕ちんを撫でてみたことがある。

彼はまんざらじゃない顔で、「身体と思考が分離した感覚」と視線を前方に定めたままつぶやいた。

淀みなく冷静に運転している様子と裏腹に、むくりと本気出す気配の僕。

 

事故が危ないので、市街地に入った瞬間私はそっと僕を手放した。

あの時の憎々しげな彼の舌打ちを私は忘れない。

 

そういえばコカコーラのトラック運転手が、運転中に女性とコトに及んでいたら事故して大変、みたいなニュースを目にした事がある。

広大なアイダホの、延々と続くまっすぐとした道路での交わりはいかがなものだったのか。

想像するとどこまでもあっけらかんとしたその精神を、純粋に愛すべきバカやなあとか、さすがはアメリカンとか、割と好意的に捉えている自分に驚く。

 

まあ、そもそもアイダホかはどころか、アメリカの出来事だったかも知らんけど。

てかアイダホどころかアメリカ行った事ないけど。ポテト。

 

アメリカって言えば先日海外に行ったとき、アメリカ人が出身地を「ユーエスエー」って言ってたのカッコよかったな。

ユーエスエー。

答えられた質問者はwhy?なってたけど(聞き取れなかった様子)

って、話を戻そう。

 

男というものは思えば身勝手な生き物だ。

 

そして僕に対して並々ならぬ何かを持っている。

そこにはきっと女にはわからないとても繊細な何かがあるのだろう。

 

「僕がタートルネック」な男性は、深みのある襟を自分でひょいっと慣れた手つきで手前にずらす。

残念見えてますよ。そしてはっきり言って女は全然気にしてませんよ。それ。

そもそもそれがデフォルトだと思ってる人すら多いと思うよ。

私も広告の載ってる雑誌を読まなきゃ知らなかったくらいだもの。

 

そんなこと気にするなんてなんというか、可愛いなあ。

あなたはそもそも、あなたが僕を挿入しようとしている、その穴から、生まれたのですよ?

くらいは、女の人は思っている。きっと。

 

そして、後ろ付きだのミミズがなんだのとか、一体どこのホットドックプレスに載ってるの?っていうアレ。

仲良しの最中に挿入が上手くいかないと「濡れない体質?」と決めつけてみたり。

だけでなく、AVの見過ぎなのかペッと唾液を吹きかけてみたり(余計に乾いて痛いです)

自販機で購入したペペなんとかを原液のまま大量に股間にぶちまけられたり。

後の惨事といったら。希釈して使うもの、アレ。洗っても洗っても取れないでやんの。

 

でもそんな愚かしくも愛らしい男という生き物の相手をしているのが、女というもの。

たかだかその中のいつもは大事に隠している一部のパーツの、皮がどうのとか大きさやら長さやら、そんなちっちゃい事気にしなさんな。

本当に夢中になっている時は、そんなことどうだっていいのだ。

どこまでが自分で、どこまでが相手かわからないほど、ドロドロに溶けて、ただ貪るように埋もれて埋めていたいのだ。

そうなっている時は、その愛おしい相手が大切なのであって、極端な話、性別すらもどうだっていい。

 

と、上から目線はさておき。

 

私自身長い事「そういう体質」なのだと思っていた。

多分、体質っていうのとは違うんだと、今でこそ思うけれども。

 

心の開き方も身体の開き方も、誰も教えてくれない。

開く方も開かれる方も知らない。

結局、自然に会得するしかないのだろうか。

思い出せるのか、動物の本能。

助けて加藤鷹先生。

 

こんな頭でっかちな私をも、上手に自分開けてくれる人もいるし

上手に自分を開くことができる相手もいる。

そこにはきっと、大いなる愛情があるのだ。

 

私も誰かを開くことができているのだろうか。

 

秘め事が秘め事たるゆえんは、本当ははしたないから、ではなくて。

もったいないから、しまっておきたいと思うほどの、かけがえのないものだからなのかもしれない。

なんて、子供みたいに思ってみる。

ある夜の、あるできごとについて書いてみる

その人は、まるでそのお店の主のように、一番奥のソファ席に座っていた。

 

いつもは消しているオーラみたいな、存在感みたいなものを大放出している。

久しぶりだ、こんなこの人。

 

どんな顔して挨拶しようか、と迷う間もなく

 

「ん、おみやげ。」

 

と、突き出すように渡されたうさぎを受け取りながら、私は主の正面の椅子に腰を下ろした。

 

私の好きなうさぎのキャラクターなのはまちがいないのだが。

だけど、何やら変な格好をしている。

 

「どこ行ったん。」

うさぎをマジマジと見つめながら聞いた私の問いかけには、チラッと視線を向けただけで答えない。

ああ、と納得して、それ以上は何も聞かないことにした。

 

ガムシロップが私のアイスコーヒーの分も入っているので、相当甘いはずのアイスロイヤルミルクティを妙に冷静な様子ですすっている。

 

機嫌がいいんだか悪いんだか。

 

簡単にかいつまんで近況報告や経緯などを話していると、ふむ、と腕を組み、そのまま腕がゆっくりと着地。

主は机に静かに突っ伏した。

 

あ、つむじ。

 

私は割と長身で、自分よりも背が高い人はなかなかいないからか。

つい背が高い人のつむじには、目が行ってしまうのだ。

触ってみたいな。押してみたい。

でも怒られるな。

真面目な話してるものな。

 

しばらくの沈黙。

 

私はつむじの誘惑から逃れるため、机の横に置いてある小さなデザートメニューをながめて、コストパフォーマンスについて考えていた。

 

……お前さ。」

 

くぐもった声にハッと視線を向けると、相変わらずのつむじ。

 

「まあ、分かったけど。言っても聞かないだろうけど……ごにょごにょ

 

ごにょごにょ、の辺りは耳に入ってなかった。

 

「本心で、お前はそうしたいの?」

むくりと主が起き上がった瞬間に、私はハッと会話の世界に戻ってきた。

 

おそらく話を聞き流していたのを悟られたのだろう、若干非難がましい目線を向けられる。

私はヘラっと笑った。

 

だって、私、肝心なことは何もまだ話してない。

 

「関係ないってゆうかもだけど、ちょっと考えたい。」

すくっといきなり立ち上がる。

何やら難しい顔で、伝票を鷲掴みしてすたすた歩いて行ってしまった。

呆然としていると、くるりと踵を返し、しばらく私の顔をにらんだ後「おやすみ」と言い残し壁の向こう側へ消えた。

 

ああ、なんだか嵐のようなヒトだ。

とりあえず私のことをとても親身に思ってくれているのだろう。

ありがたいけどもね。

そして、こういうところは私に似ている。

 

やれやれ、と立ち上がり、だいぶ氷で薄まったコーヒーを飲み干してからお店の外に出ると

私のバイクの横の柱に寄りかかる主の姿。

 

まだ帰ってなかったらしい。

 

「タイムリミットないと、お前、ほら、ダメだろ。」

性格的にね。

乾いた笑い。ちっとも目は笑ってない。

 

「まっすぐだもんな。」

残酷なくらい。

あれだよ、なんとかビーム!みたい。

 

ビームねえ、と、私はベルトにじゃらじゃらとぶら下がっている鍵を見つめていた。

あれがきっと、この人の捨てられないものなのだろう。

 

「週末また来るから。ちょっと考えさせて。」

 

言葉には、何やら悲壮感すら漂っている。

これだけ思いつめるようなことをしてしまったのだろうか。

 

「ごちそうさまー。」

 

背中に声をかけると、律儀に振り向いて、真顔でこっくり頷く。

 

その姿を見て、なんだか心強いような、楽になったような気持ちになる。

ゆってもいいかなあ。

心の中身。私の核心。

 

ゆわずとも、伝わっている気もするけれど

 

私も考えないといけない。

 

選ぶもの

捨てるもの

諦めるもの

追いかけるもの

 

どれももれなく大切なもの、なのだが。

 

見込みのないもの

 

それがどんなに思い入れのあるものでも、そのまま持っていたら、きっと傷つけるんだ。

だからきっと、こんなに時間が経っても、何も変えられてない。

頑固だね。

ゆるやかに、私も何か形を変えないと。

目をつぶってナタを振り下ろしたことについて書いてみる

飛行機のマイル。失効は3年。

そろそろ消え始めるマイル。3年かけて貯めたもの。

 

それと同じように、嫌われるのが怖くて、ずっと溜め込んでいたものがある。

言いたくないような、でもどこかに吐き出したいような、ドロドロとした感情。

 

体の中で毒が回るように、じわっと蝕まれていく。

ほっこりしたものも、ふんわりしたものも、少しずつくすんでいく。

言葉をまっすぐ受け止められず、皮肉に聞こえてしまう。

 

朝起きて、自分の部屋に転がっていた貰った少女漫画を読んで

女の子の方がキラキラしすぎてて眩しかった。

怒っているような、失望しているような、重い頭を持ち上げて

ここでやめたら何のために中途半端に傷つけてるのか分からない、と思った。

 

徹底的にやらねば。

徹底的に。嫌われるまで。

傷つけるのを分かっていても、私は目をつぶってナタを振り下ろす。

 

ひるみそうになる気持ちを、お腹に力を入れて押さえ込んで。

とにかく前のめりに一方的に、自分の気持ちをワガママに吐き出したら

ああ、何も残ってないな、と妙に空虚な、それでいてフラットな気持ちになった。

 

バイクのチェーンでも磨くかな、とダンボールを引っ張り出してきて

カバーを外そうとしたら雨が降ってきて、カバーを戻して

ダンボールは玄関にほっぽり投げて

歩こうかな、と近所のスーパーまで意味もなく歩いて

近所のコンビニ寄って、食べもしないお菓子を買って

雨空を部屋から眺めて、コーヒー飲んでみたら

吐き出したこと自体には全く後悔はない自分に気がついた。

 

酷いものだ。悪魔だな。

 

読みかけた少女漫画をパラリとめくる。

 

ああ、登場人物の女の子にばかり目が向くのは、

私にとってのいわゆる王子様は

イケメンでちょっと強引な髪の毛サラサラのこの彼でなくて、

メガネのあのバンドのボーカルじゃなくて、

オシャレなあのシンガーソングライターでもなくて

 

めんどくさいくらい繊細で

すぐお腹痛くなる

弱音吐いたり強がったりと忙しい

本当は寂しがり屋で臆病で怖がりで強がりで

なかなか素直になれない胃に穴開けそうな

あの人だから、なのだろう。

 

などと性懲りも無く考える自分に

ふ、と思わず苦笑いしてしまった。

どうしようもないね。

何されたって本当は全部、許してしまっているのだから

怒りようがないんだ。

だから安売りなんだよって、それは言わないけど。

あの日の見慣れない天井も、遅れてきた鈍い痛みも。

ただそれを、弔いたいだけなんだ。

 

本当は分かってくれる人、側にいるんだよ。

なんだかんだ言って、みんなあなたのことが好きだから

大丈夫。幸せになれるよ。