花は折りたし梢は高し

とにかくいろいろうまくいかねーなってことを書いていこうと思います。

「惚れて通えば千里も一里」私が惚れたものとはなんだったのかと思うことを書いてみる

少しずつフェイクを入れて話をする。

 

昔、3年くらい遠恋をしていた。

 

もともと旧知の仲だったが、たまたま久々に会って、深い話をするうちに恋仲になった。

車で3時間くらいの距離だろうか。

当時私は、社会に出てからそれほど経っていなかったので、お金も無かったが、それでも月に一回程度、週末にせっせと通っていた。

 

しかも初めの半年くらいは、うっかり二股をかけられていた。

彼女とは別れたって言ったから付き合ったのに切れてなかったっていうね……

まあよくあるやつはは。

 

思い返せばかなりの二股率だ。

婚姻届まで書いた彼に浮気をされた時に「もう二度と浮気性とは付き合うまい」と心に誓った。

つまり、男とは付き合うまい、と同意義である、程度に、私は男というものを信じていない。

遺伝子的にそうでしょう。私より優れたメスがいれば、種を残したいと思って当たり前だ。

君を裏切れないなんてそんなのは幻想で、目移りしないのは、結局私の方が他のメスより優れていると判断してくれているか、求愛するのがめんどくさいだけだ。

 

と考えているが、それが何の因果か人妻になったりすんだから、人生って分からないものである。

 

さて、話を戻す。

 

初めは交代で行き来していた私達だが(交代でいけば月に二回は会える)

けれどすぐに私しか行くことはなくなった。

会う頻度は半分。

でも辛くも寂しくもなかった。

 

毎晩、いくらでも話せるようになったからだ。

彼が同棲していた彼女との家を出て、一人暮らしを始めたからだった。

 

付き合い始め、当然実家にいるものだと思っていた彼が、実は彼女とまだ住んでいたという衝撃。

どうりで連絡の頻度が下がったり、電話できないと言い張る夜があった訳だ。

(彼女は夜勤のある仕事。連絡が少ない日は、彼女の在宅日だったのだろう。)

 

いやはや、とんでもない男だ。

 

今思えばバカバカしいが、敷金礼金、初期費用は全て私が立て替えた。

もう彼女への気持ちはないし、別れているも同然だが、お金がないから彼女との家を出られない、という彼の言い分(言い訳)への、私なりの意地だった。

 

1Kのアパート。

下見も一緒に行った。

私は親に何かを感づかれるとめんどくさいので、遊びに行った時はタバコの匂いがつかぬよう、自分のコートは玄関にかけていたのを覚えている。

 

引越しからしばらく経ったある日、彼から「わかれました」とひらがな6文字のメールがきた。

当初は意味がわからなかった私は、勝手に彼女ともう別れたと思い込んでいただけで、その時点までズルズルと続いていたのを知った。

 

私は静かに問い詰めた。

彼女は精神が不安定で、仕事も落ち着いてなくてうつ気味で、俺が支えてあげないとダメだった。

彼女は俺と別れることも、新しい彼女がいることも納得してくれている。

でもしばらく一緒にいてと言われていた。

5年以上付き合い、同棲までした責任もあった、と彼。

 

んな無茶苦茶な。

もはや公認二股。

そして新しい彼を見つけた彼女に、三行半突きつけられた結果。

ドカッと彼女から彼の私物の入った段ボールが3箱が届いた。

 

なぜか彼女の新しい彼氏に対しなぜかクサクサしている彼を、励ましている私。

あれ?私ってなんだっけ?

セカンド?え?まあいいけど。

 

やー男ってなあ……男って。

 

そして、女は男前だ。

そんな男でも受け入れてしまうのだ。惚れていたのかなんなのか。

彼女が今は幸せに暮らしているのを風の便りで知っているのが唯一の救いか。

男女の関係って常識では考えられないものがあったりするなあ。

 

さて、その引っ越した家は、天井が高いところが二人とも気に入った。

そして、何より小さな穴ぐらのようなロフトがあったのだ。

 

秘密基地のように、ロフトにはパソコンや本棚を置き、大抵はそこで二人して篭って思い思いに過ごした。

なにもそんなに狭いところに閉じこもる必要もないのだが、ロフトの下のメインの部屋にはほとんどものがなかった。

彼の服が積み上がっている程度。

…というくらい、せまーい空間で過ごしていた。

 

ロフトには私の私物を置いておく棚も作った。

一緒にパソコンやゲームを眺めて、別々に本を読んで、たまにセックスして。

私が帰った時も、だいたい11時くらいにパソコンの音声チャットを始める。

彼はあのロフトでゴロゴロしながら、私と会話をする。

1時になったら、そろそろ寝るかと眠る。

ほぼ毎晩、2時間程度、なんてことない話をして過ごしていた。

とはいえ、ずっと話に集中している訳ではない。テレビを見ていたり、ゲームをしていたりもする。

 

洗濯機の位置などの間取りは、今ではよく思い出せないのに、あのロフトからの光景だけは鮮明に思い出せる。

変な名前のアパートだったな。

今はどんな人が住んでいるんだろう。

 

私が好きだったのは、初めは確かに彼だった。

けれど思い返せば、後半はあのロフトでゴロゴロ過ごすのが楽しみだった、ような気もしている。

 

思い立った深夜、ストリートビューであの辺りを見てみた。

建物自体は見えなかったけれど、どうやら現存するようだ。

 

いつか機会があったら、行ってみたい。

あの頃の私が置いてきた何かが、見つかるのかもしれない。

飛行機雲のように。神社で拾った松ぼっくりのように。